ティッシュでこするだけ!「動くストロー」で学ぶプラスとマイナスの静電気の科学

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

 冬になると、ドアノブに触れたときに「バチッ!」と静電気を感じたことはありませんか?あの、指先に走る小さな衝撃。あれは、空気が乾燥している冬に起こりやすい、おなじみの現象ですね。実は、あの「バチッ!」の正体は、目には見えない強力な「電気の力」の仕業なんです。もし、その見えない力を自分の手で操(あやつ)れたら…面白そうだと思いませんか?

今回紹介するのは、その静電気の力を使って、まるでストローに魔法をかけるような実験、「動くストロー」です。特別な道具はほとんどいりません。静電気の不思議な世界を、一緒に体験してみましょう!

用意するもの

木片釘(くぎ)曲がるストローティッシュ。 (※動画では風船も使っていますが、まずはティッシュだけでもOKです!)

方法

1 木片に釘をうちつけて、倒れないように台を作ります。

2 曲がるストローをまげて、釘の頭にそっと乗せ、バランスをとって上からかぶせます。これでストローが自由に回転できるようになります。

3 いよいよ魔法の準備です。まず、釘の上のストローを、ティッシュでよーくこすります。次に、こすったティッシュそのものを、ストローにゆっくり近づけてみましょう。 さらに、もし風船があれば、風船もティッシュでこすってから、ストローに近づけてみてください。

ストローはどのような反応を示すでしょうか?

こちらの動画で、実際の動きを確認してみましょう!

なぜストローは動いたのか? 見えない力の正体

ストローが勝手に動いたように見えましたが、もちろん魔法ではありません。これは「静電気」の力です。モノとモノがこすれ合うと、「電子(でんし)」という電気の小さな粒(つぶ)が、一方からもう一方へ移動することがあります。今回の実験では、ストローとティッシュをこすりました。この2つの素材では、ティッシュは電子を失いやすく、ストローは電子を受け取りやすい性質があります。

その結果、ティッシュは電子が足りない「プラス(+)」の状態に、ストローは電子が多すぎる「マイナス(-)」の状態になります。この、電気が偏った(かたよった)状態になることを「帯電(たいでん)」といいます。(ちなみに、ゴム風船もティッシュでこすると、ストローと同じように電子を受け取りやすく「マイナス(-)」に帯電します)

帯電列 桑子研・竹田淳一郎『科学検定公式問題集5・6級』(講談社)参照

上の図は「帯電列」といって、素材ごとに「プラスになりやすいか、マイナスになりやすいか」を並べたものです。こすり合わせる素材の組み合わせによって、どちらがプラスになるかが決まるんですね。さて、電気にはとても大切なルールがあります。それは…

  • 同じ種類(プラスとプラス、マイナスとマイナス)は、反発しあう(斥力:せきりょく)
  • 違う種類(プラスとマイナス)は、引き合う(引力:いんりょく)

という性質です。磁石のN極とS極の関係に似ていますね。だから、マイナスに帯電したストローに、同じくマイナスに帯電した風船を近づけると…?

そう、お互いに「来ないで!」とばかりに退け合います。ストローは釘の上で自由に回れるので、風船から逃げるように動きます。では、マイナスに帯電しているストローに、今度はプラスに帯電しているティッシュ(ストローをこすったティッシュ)を近づけるとどうなるでしょう?

 今度は、お互いに引き合います! ストローはティッシュに吸い寄せられるように動きます。 この実験により、私たちは目に見えない「電気の引力と斥力」を、ストローの動きを通して体験することができたのです。

近づけると「突然」動き出すのはナゼ?

もう一つ、面白いことに気づきませんでしたか?ティッシュや風船を近づけていくと、遠くにあるときは何も起こらないのに、ある距離まで近づいた瞬間に、ストローが「突然」クルッと動き出したはずです。 実は、この静電気の力(クーロン力といいます)は、2つの物体の「距離」と非常に深い関係があります。

 この公式が示しているのは、ものすごく簡単に言えば、「近づけば近づくほど、爆発的に力が強くなる」ということです。例えば、距離が半分(1/2)になると、力はなんと4倍(2×2)になります。距離が3分の1になると、力は9倍(3×3)にもなるんです!だから、遠くから近づけている間は力が弱すぎてストローは動きませんが、ある一点(距離)を超えた瞬間に、ストローを動かすのに十分な強い力が「突然」発生し、動き出したように見えた、というわけです。

静電気発生マシーンを使うと、こんな面白い実験が!!

手でこするだけでも面白い静電気ですが、専用の「静電気発生マシーン(バンデグラフ)」を使うと、さらにパワフルで驚くような実験ができます。このほかにも、静電気マシーン(バンデグラフ)を使った面白実験も公開しています。この実験は、広瀬すずさん・鈴木亮平さん・やす子さん・チョコレートプラネッツの長田さん・松尾さん等とテレビ番組にて行った実験も含まれます。詳しくはこちらをどうぞ

【科学監修】ビリビリ電気賞状!?広瀬すずさんと体験した静電気実験授業(沸騰ワード10)

※ なお、静電気発生装置(バンデグラフ)を用いた実験については、必ず専門家の方の立ち合いのもと行ってください。お気をつけてお試しください。また静電気実験に関するご依頼(実験教室やTV監修・出演等)についてはこちらからお願いします

【特集】やめられなくなる!静電気実験

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